テルミサルタン(ARB)が慢性鼻炎のミニチュアダックスフントに著効した1例
◯土井 公明1)、 5)、樋渡 敬介2)、 5)、水野 理介3)、 5)、横須賀 誠4)、 5)
1)どいペットクリニック(藤枝市)、2)御殿場インター動物病院(御殿場市)、3)つくば国際大学医療保健学部臨床検査学科、4)日獣大獣医学部獣医学科病態解析学分野、5)Japan Veterinary Microcirculation Research Center (JVMRC)
【はじめに】 犬の鼻炎、特にミニチュアダックスフントの鼻炎は難治性で慢性化に至る個体を散見する。鼻炎の原因は細菌、真菌、アレルギー、歯牙疾患および新生物など様々でそれらが複合的に関与している症例も多い。今回の細菌性鼻炎の症例は、抗生物質に対して治療抵抗性であった。そこで、鼻腔の微小循環の改善と鼻炎に対する抗炎症作用を目的にテルミサルタン(ARB)を投与したしたところ、数日で症状が緩和し、6ヶ月経過した現在も同薬内服により良好な経過が継続している1例について報告する。
【症例】 ミニチュアダックスフント、11歳、避妊雌、BW6.0kg。室内飼育。各予防は適切に実施。9歳時に重度胆泥症のため胆嚢摘出歴。歯垢が多いので約2年間隔で口腔処置実施。歯槽膿漏は軽度。くしゃみと鼻汁が急に見られるようになったため治療を開始した。
【治療および経過】 膿性鼻汁の治療のため1ヶ月間アモキシシリン10mg/kgBID の内服をしたが効果を認めなかった。細菌検索と感受性検査では、Pasteurella spp.少数 α-Streptococcus少数 アモキシシリンはどちらの細菌にも感受性ありの結果であった。次にテルミサルタン(ARB)を単独で0.5mg/kgSID POで開始。投与3日目には水っぽく切れが良い鼻汁に変わり、7日目には膿性鼻汁はほぼ消失した。少量の鼻汁は引き続き認められ1日2回ほどのくしゃみとともに排出された。内服4ヶ月後の細菌培養結果はPseudomonas spp(2+)であった。約半年経過した現在、テルミサルタンのみ内服を継続しているが、朝と夕にくしゃみと共に少量の鼻汁が排泄されるだけで生活の質は良好に保たれている。また、以前に比べ快活さが戻っている。
【考察】 これまでに我々は「テルミサルタン(ARB)はネコ鼻炎症状を緩和する」報告を行ったが、今回犬においても良好な結果が得られた。慢性鼻炎のミニチュアダックスフントは、近年増加傾向にあり消炎剤、抗菌剤、去痰剤およびステロイド剤の内服や吸入などの治療が行われるも十分な効果が得られないことが多い。鼻炎に対するARBの作用は不明な点が多いが、局所のレニンーアンジオテンシン系に作用し鼻腔粘膜面における微小循環の改善および抗炎症効果が得られたため速やかな症状の改善が見られたと推測した。また、本症例において、鼻炎の症状改善とともに快活さが増したのは、脳—嗅神経—頸部リンパにつながる一連の古典的リンパ排出系とGlymphatic pathwayがARBにより改善した結果と推察される。以上より、テルミサルタン(ARB)は犬の慢性鼻炎治療に有効な薬剤であることが判明した。さらに、抗生剤減薬によって腸内フローラ錯乱防止が可能となり、高齢犬鼻炎に対して「やさしい」「高QOL」を提示する薬剤の一つと考えられる。
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