昨年11月に開催された 静岡県獣医師会 中部症例発表会 共同研究発表が
中部獣医師学会に選出されたため
本年8月28日 岐阜で開催された中部獣医学会で
心不全治療薬であるアンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬の治療効果について
発表を行いました
アンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬(ARNI)の犬慢性心不全への効果検討とその適応性
○土井 公明1)、樋渡 敬介2)、水野 理介3)
1)どいペットクリニック(静岡県)、2)御殿場インター動物病院(静岡県)、3)岡山理大
【はじめに】 アンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬(ARNI)は、ネプリライシン(NEP)とレニン・アンジオテンシン・アルドステロン系(RAAS)を同時に阻害する新規作用機序を有する。サクビトリルバルサルタンナトリウム水和物錠(エンレスト錠)は、サクビトリルのNEP阻害作用に伴うRAAS活性化をバルサルタン(アンジオテンシンⅡタイプ1受容体拮抗薬;ARB)が抑制するため、NEP阻害による利点を最大限引き出すことが期待されている。今回我々は、既存薬で症状の維持が困難になった慢性心疾患の犬にARNIを使用し、その効果を検討したので報告する。
【材料および方法】 ピモベンダン、ARB、アンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACEI)、フロセミド、イソソルビドなどの既存薬で症状の維持が困難になった8-17歳の犬7症例(弁膜症による心不全6例、不整脈1例)にエンレスト®錠を0.7-3.3 mg/kg bid POで投与し、症状の変化および予後を観察した。併用薬剤は個体別の症状を考慮して決定し、併用禁忌であるACEIは除外した。
【結 果】 弁膜症による心不全末期の肺水腫2例では、16日と29日のQOLの改善が得られた。運動不耐性および呼吸不全を呈した1例は散歩が可能となり48日のQOLの改善が得られた。残りの弁膜症3例は30日経過が2例で、6カ月経過の1例が生存中である。不整脈の症例では、投与開始後一度も失神がなく、6カ月間良好である。
【考 察】 近年、医療においてARNI、SGLT2阻害薬やsGC刺激薬など新規の心不全治療薬が上市された。小動物領域の心疾患で最も遭遇するのは僧帽弁粘液腫様変性であり、高度の左心房拡大によって心因性発咳や左房圧上昇に伴う肺水腫を生じ、経時的に心肺機能が著しく低下する。今回我々は、既存薬で症状の維持困難になった犬の慢性心疾患7例にエンレスト錠を使用し、著効4例を含め余命の延伸が得られた。以上より、ARNIはその薬理作用から左心房拡大が認められた早期から治療介入することで余命の延伸、心筋線維化防止、リモデリング予防効果も期待でき、小動物臨床領域における慢性心疾患への適応に非常に有効な薬剤であると考えられる。
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