院長コラム

2023/12/03 令和5年 日本獣医師学会学術大会 高齢犬睡眠障害 発表しました 12月神戸
No. 56

高齢イヌの睡眠障害に対するオレキシン受容体拮抗薬の有効性:159症例をまとめて

○樋渡敬介1)、土井公明2)、堀 正敏3)、水野理介4)
1) 御殿場インター動物病院、2) どいペットクリニック、3) 東京大学大学院農学生命科学研究科獣医薬理学教室、 4) 岡山理科大獣医学部獣医学科獣医薬理学教室

近年、ペットの高齢化に伴い複合的な疾患や認知機能不全 症候群の一つとして、飼主にも精神的負担の強いる夜間の睡 眠障害が問題となっている。現在その治療には、主にGABA 受容体作動薬やバルビツレートが処方されることが多いが、 薬物の効果が翌朝まで残ることで生じる、覚醒後のつまづき や転倒などの有害事象のリスクも高い。 医療では、睡眠導入薬としてオレキシン受容体阻害薬であ るスボレキサント(ベルソムラMSD)が上市され、従来の 睡眠薬の持つ有害事象の少ない新しい治療薬として処方例が 増加している。しかし、獣医療における本剤のその効果や安 全性が明確でなく、積極的な導入が進んでいないのが現状である。今回、我々は睡眠障害を呈する高齢イヌに、ベルソム ラを投与し、その効果と安全性を調査したので報告する。
症例は 2 つの動物病院施設で実施した(2016年 8 月から2023年9月)、11歳以上(11-19歳:平均14歳)、雄99頭(去勢37頭) 雌60頭(避妊27頭)の非薬物療法が困難と判断された159症例である。各症例にベルソムラ(0.6-5.8mg/kg)を就寝前 1 日 1 または 2 回、 3 日以上投与した。適応した睡眠障害の症 例は、夜鳴きによる単独の症状のみならず、心不全・腎不全・ 糖尿病なども含む。有効性は来院時に、診察と飼主からの投 与前後の聴取により、症状改善度を著明改善(睡眠障害解消)、 改善(睡眠障害一部解消)、不変および悪化の 4 段階で評価 し た。 結 果、 著 明 改 善108例(68%)、 改 善45例(28%)、 不 変 6 例(4%)、そして悪化 0 例(0%)であり、著明改善と 改善を合わせると改善率は96%(153/159)であった。不変 の症例は、すべて重度の認知機能不全症候群であった。また 有害事象は 1 例で、内服30分後興奮状態となったがその後入 眠し、重篤な副作用は認められなかった。今回の調査により、 ベルソムラは高齢イヌの睡眠障害に対して高い有効性を示 し、飼主の精神的負担軽減に伴うQOL改善にも有効である と考えられた。

orexin suvorexant belsomra dog canine population ageing (aging) sarcopenia and frailty dementia sleep senior dog Glymphatic system Human-Animal Bonds

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