院長コラム

2025/01/30 令和7年 日本獣医師学会学術大会 糖尿病ネコにSGLT2阻害剤 発表しました 1月仙台
No. 64

糖尿病ネコにSGLT2阻害剤を単独適応した5症例の効果検討 
 
〇 樋渡敬介1), 土井公明2), 堀正敏3), 水野理介4)
1)御殿場インター動物病院, 2)どいペットクリニック, 3)東京大学大学院農学生命科学研究科獣医薬理学教室, 4) 岡山理科大獣医学部獣医学科獣医薬理学教室 
 
ネコの糖尿病(Diabetes Mellitus: DM)は、インスリン分泌不足や感受性低下により高血糖状態が持続する疾患である。従来の治療は、インスリン療法が中心である。しかしながら家庭での管理が困難な場合や頻繁な来院が求められることから、とくに高齢ネコの場合治療を断念するケースも報告されている。医療では、新規作用機序の経口糖尿病治療薬であるナトリウム/グルコース共輸送体2(Sodium/Glucose Cotransporter2: SGLT2)阻害剤が上市され、処方例が増加している。SGLT2阻害剤は、近位尿細管特異的にグルコースの再吸収を阻害して尿糖排泄量を増加させ、インスリン非依存性に血糖値を低下させる。獣医療でも2024年9月よりネコDMに適応されたSGLT2阻害剤が発売され、今後普及することが考えられる。今回我々は、ネコDMにSGLT2阻害剤ダパグリフロジンプロピレングリコール水和物(フォシーガ®:アストラゼネカ)を単独で適応し、その効果を検討したので報告する。症例は、2021年9月から2024年8月に来院したインスリン未治療のネコDM5頭(年齢:10 -15歳、性別:雄4頭・雌1頭・全て不妊手術済、体重:2.9-4.4kg)であり、フォシーガを6ヶ月以上投与(最長2年11ヶ月・継続治療中)したものを対象とした。結果:全例において、高血糖、多飲多尿、体重減少などの典型的なDM症状を呈していた。血糖値は、投与前( 388±50mg/dL)と比較して、全例投薬1ヶ月後(126±37mg/dL)・6ヶ月後(128±33mg/dL)において有意に低下した。体重は、全例投薬1ヶ月後・6ヶ月後において維持または微増が認められた。投与期間中、脱水や膀胱炎などの副作用は全例において認められなかった。また、本剤による治療法は、高齢飼主による罹患ネコの管理負担を大きく軽減した。現在4症例において継続治療中であり、1症例で投与後6ヶ月腎不全により永眠した。今回用いたSGLT2阻害剤は、飼主によるインスリン療法が困難なネコDM(合併症無し)に対して、比較的早期の段階から高い安全性と有効性を示した。また、ネコのみならず飼主の負担軽減に伴うQOL改善にも有効であると考えられた。一方、合併症により脱水や食欲が低下している症例に対しては、導入が困難であることも判明した。

ネコ 糖尿病 SGLT2阻害剤 ダパグリフロジンプロピレングリコール水和物 フォシーガ 獣医療 QOL Cat feline Diabetes SGLT2 inhibitor Dapagliflozin propylene glycol hydrate Forxiga Veterinary medicine QOL

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