イルミネーションが美しく輝き、富士山の雪化粧が鮮やかなこの季節、御殿場へ愛犬・愛猫とともにお越しになる方も多いことと存じます。 楽しい旅行の計画を立てていらっしゃる中、水を差すようで心苦しいのですが、地元の獣医師として、この地域特有の「冬の厳しさ」について、少しだけ医学的な観点からお話しさせてください。
当院では、夏と同様に、冬場も旅行中に体調を崩して来院されるペットたちが少なくありません。その多くが、寒さに起因する消化器症状や、体温調節の不調によるものです。
「御殿場の寒さ」をデータで見る
「寒いと言っても、関東近郊とさほど変わらないだろう」 そう思われる飼い主さまもいらっしゃるかもしれません。しかし、地理的なデータを見ると、その環境差は歴然としています。
御殿場市の市街地は、標高約400mから500mに位置しています。 気象学の一般的な目安として、標高が100m上がると気温は約0.6℃下がると言われています。つまり、海抜に近い東京や横浜の市街地と比較すると、単純計算でも常に約3℃前後気温が低い環境にあります。
さらに、御殿場は富士山の麓にあるため、「御殿場おろし」と呼ばれる冷たく強い風が吹く特徴があります。体感温度は風速1mにつき約1℃下がるとされていますので、風のある日は都心部と比べて5℃〜10℃近く寒く感じることも珍しくありません。 これは、人にとってもペットにとっても、かなり過酷な温度変化です。
<冬のアクティビティに潜むリスク>
旅行中は、アウトレットモールでのお買い物や、ドッグランでの運動など、屋外で長時間過ごす機会が増えます。ここに、普段の生活とは異なるリスクが潜んでいます。
1. ドッグランでの「急激な体温低下」
「走っていれば体は温まる」というのは、半分正解ですが、注意が必要です。 ドッグランで走り回っている最中は筋肉が熱を産生しますが、運動を止めたり、他のワンちゃんと挨拶をしたりして立ち止まった瞬間、かいた汗(肉球の発汗)や呼気による湿気、そして冷たい外気によって、体温は急速に奪われます。 特に、被毛の薄い犬種や小型犬は、筋肉量が少ないため、一度冷えてしまうと自力で体温を戻すのに多くのエネルギーを消耗します。
2. 人混みでの「見えない疲労」と「底冷え」
観光地の人混みの中では、ペットは自分のペースで歩くことができず、常に緊張状態を強いられます。精神的なストレスは自律神経のバランスを崩し、体温調節機能を低下させます。 また、地面に近い場所を歩くペットたちは、アスファルトやコンクリートからの「底冷え」を直接お腹や足に受け続けています。私たちが感じている以上に、彼らの体は冷え切っている可能性があるのです。
<飼い主さまにお願いしたいこと>
せっかくの旅行を楽しい思い出にするために、以下の点にご留意いただければ幸いです。
・洋服の着用を検討する 普段はお洋服を着ないワンちゃんも、御殿場の屋外では1枚着せてあげることを強くお勧めします。これはファッションではなく、体温低下を防ぐための防寒具としての役割です。
・「こまめな」休憩と保温 長時間の屋外活動は避け、30分〜1時間おきに暖かい車内や室内に入り、体を温める時間を作ってください。
・震えはサインです もしペットが小刻みに震えていたり、足を上げたりしている場合は、限界のサインです。すぐに暖かい場所へ移動し、毛布などでくるんであげてください。
<万が一、体調を崩された場合>
どんなに気をつけていても、環境の変化で体調を崩してしまうことはございます。 当院は、旅行中の急なトラブルにも対応しております。もし受診される場合は、前回のコラム(No.66 夏の注意喚起)でもお願いしました通り、以下の情報を整理してお持ちいただけると、よりスムーズで的確な診療が可能となります。
既往歴・現在治療中の病気
投薬中の薬の名前(現物があればベストです)
いつから、どのような症状が出たか
御殿場の冬は厳しいですが、空気が澄んでおり、富士山が最も美しく見える季節でもあります。 十分な寒さ対策をしていただき、愛するペットと素敵な時間をお過ごしください。
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