樋渡 敬介(御殿場インター動物病院)
岡本 哲也(渡辺動物病院)
渡辺 直之(渡辺動物病院)
1. はじめに 後天性の重症筋無力症(MG)は、神経-筋接合部におけるアセチルコリン受容体(AchR)に対する自己抗体が関与した自己免疫疾患とされている。
MGは病歴、臨床所見、血液検査、胸部X線検査、テンシロン試験、および抗AchR抗体の検出などにより総合的に診断される。
上記の検査において確定には至らず、誘発刺激試験によりMGと診断した犬の1例について報告する。 2. 症例 2歳齢、去勢済み、ウェルシュコーギー、13kg。
流涎、食後の嘔吐および運動不耐性を主訴に来院。胸部X線検査において食道拡張を認めた。
CBC、血液生化学検査、甲状腺ホルモン検査(T4)は正常で、抗AchR抗体は陰性であった。
食道拡張の原因を鑑別する目的で反復刺激試験を実施した。 3. 方法 イソフルレン吸入による全身麻酔下にて、反復刺激による誘発筋電図検査を実施した。
刺激用針電極は大転子付近より坐骨神経へ刺入、筋電図記録用針電極は前脛骨筋へ刺入した。
刺激電位は、神経刺激により最大収縮が得られる最小電位に設定、3Hzで5−6回の連続刺激を実施した。
反復刺激により誘発された筋電図の振幅をそれぞれ測定した。 4. 結果と診断 3Hzの反復刺激において、5発目に最大(27%)となる振幅の低下が認められ、神経筋接合部疾患と診断した。筋電図検査および各種検査結果より、MGと診断した。 5. 考察 犬のMGの約80-90%において抗AchR抗体が検出されると報告されているが、本症例では検出されなかったため、反復刺激試験を実施した。
結果は27%の減衰率で、犬のMGの診断基準である減衰率10%以上を超えており、他の検査結果も含めてMGと診断した。
犬のMGにおいて抗AchR抗体が検出されなかった場合には反復刺激試験が有効な検査の1つであることが示された。
2024年08月
2023年12月
2023年02月
2022年11月
2022年10月
2022年08月
2022年06月
2021年12月
2020年05月
2020年02月
2020年01月
2018年11月
2017年12月
2017年07月
2017年04月
2017年03月
2017年02月
2017年01月
2016年12月
2016年10月
2016年06月
2015年12月
2015年11月
2015年06月
2015年04月
2015年03月
2014年09月
2014年04月
2013年03月
2013年02月
2012年12月
2007年04月
2004年09月
9/ 1
2001年09月
2000年09月